所得税とは?

[木山 泰嗣]の弁護士が教える 分かりやすい「所得税法」の授業 (光文社新書)

所得税は所得に応じて支払う税金です。ところが、収入があっても所得税を支払わなくてよい人もいるのです。所得税を支払うことが義務付けられているのは、課税所得がある人です。1年間で1万円のアルバイトをしたからといって、確定申告を行って所得税を納付する必要はありません。

というのも、課税所得とは収入から必要経費や各種控除などを差し引いて計算されるからです。例えば、給与所得者であれば、65万円の給与所得控除と38万円の基礎控除を組み合わせることで、合計103万円までの収入なら課税所得がゼロとなり、所得税が非課税となります。では、所得税に控除が設けられているのはなぜなのでしょうか。

所得税では、所得の多い人ほど負担割合が高くなる累進税率が採用されています。もっとも低い税率は5%とされており、所得が多くなるにしたがって税率が上昇し、平成27年以降は最高で45%の税率が適用されます。ただし、税率の区分付近の所得の人が支払う税金が急に増えないよう、一定の控除額が設けられています。累進税率を採用することで、所得格差の是正を行うことができますが、これだけでは少しでも所得があると税金を徴収されることになってしまいます。所得が少ない人の負担をさらに減らすために、各種控除が設けられています。

所得税の累進性は、所得格差の間接的な是正にも貢献することが期待できます。高所得になるほど所得税率が高くなることから、高所得者は追加の仕事をするインセンティヴが小さくなります。いっぽう、低い所得税率が適用される中・低所得者にとっては、追加の仕事をすることで手元に残るお金が高所得者よりも多いことから、追加の仕事をするインセンティヴが相対的に高くなります。したがって、仕事が低所得者に回りやすくなり、結果として所得格差の是正に貢献する可能性があります。

ただし、所得税の累進性を高めると、高所得者が能力を活用して追加の所得を生みださなくなり、税収が減少することも懸念されます。所得税率は、税収の確保や所得の再分配機能など、複数の側面を考慮しながらしばしば変更されています。何を持って最適とするかの判断は難しいからです。