個人投資家の推薦図書(1)マネーの公理

2015年11月8日

スイスの投資家が、12個の投資・投機のルールについて書いた本です。これらのルールの発祥については次のように説明されています。

投機のルールは、スイスの銀行界や投機筋の仲間うちで暗黙の了解事項として培われ、やがて「チューリッヒの公理」と呼ばれるようになった。それは真実であり、深みのある意味を持ち、いくらか冷淡で、神秘に等しい。投機の哲学というだけでなく、人生の成功にとっての道しるべでもある。「チューリッヒの公理」は、多くの人々を金持ちにした。

ここでは、俺が気になった文章を引用してコメントを書きます。

P44 投機においては、お金を入れるべきは、あなたにとって純粋に魅力のある対象であり、それだけにお金を投じるべきである。ポートフォリオを分散させるためという理由だけで、何かを買ってはいけない。

P44 「すべての卵は一つの籠に入れろ。そして籠を見守れ」

P241 ジェシー・リバモアは次のように書いている。「私が(短期的な)投機によって失ったお金は、一度投資したらそのままにしておく、いわゆる投資家といわれる人たちによる巨額の損失よりも小さいものであると信じている。私の見方では(長期)投資家は大いなるギャンブラーである。彼らは、賭けたままそれを持ち続けるので、うまくいかないと、すべてを失う可能性がある。賢明な投機家は、迅速に行動することによって、損失を最小限に抑えるものだ。」

マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール

分散投資は、結局のところ勝ちと負けの規模を小さくするだけなのでやめるべき。自分が賭けるするところにだけベットし、そうでないところにはビタ一文賭けるなと書かれています。これは、結局のところ投資家が何を求めて投資をしているのかということに依るのだと思います。もし、インフレリスクをヘッジするために株式を買うというのであれば、卵を一つの籠に入れる必要は全くありません。著者は、世間一般でいう「金持ち」になるために給料を使って投機をするべきだと主張しています。もし金持ちになるのが目的なのであれば、確かに分散投資をやっていても取っているリスクが小さい分だけ実入りも少ないため、目的を達成するのは難しそうです。

もちろん、個別銘柄のリスクによって、卵を入れて見守っていた籠が突然爆発するリスクは厳然と存在します。ローソンエンターメディアの役員が不適切な投資をしていて会社の資産が消滅したり、三栄建設の代表取締役に株価をつり上げて売り抜けたのではないかという疑いがかかったり、一六堂で広告出稿の方針を変えたことで大幅減益となったり。事前に予想・予測することが難しく、且つ株価が暴落するようなイベントは確かに存在します。逆に言うと、これらの個別銘柄リスクも合わせて取るべきだということです。

P76 期待したり、祈ったりしてはいけない。目を覆ってはいけないし、その場で恐れおののいてもいけない。何が起こっているのか、まわりを見渡すのだ。状況を観察して、起こりつつある問題が、修正できるかどうか自問してみるのだ。状況が改善しつつあることを示す、信頼できる実体のある証拠を見つけ出さなければならない。もしも、それが存在しないなら、手遅れになる前に行動を起こすのだ。

P102 すべての予測は、予想できない出来事が起こるリスクにさらされている

P140 研究によって勝算が高まったかもしれないが、それでも投資においては、幸運という圧倒的に大きな存在を無視することはできない。

調査に調査を重ねて確信に近いモノが得られたとしても、それを覆すようなイベントはいくらでも発生します。大きくは、地政学的リスク、自然災害リスク、パンデミックリスク、個別株式のリスクがメインになると思います。

地政学的リスクの例は東日本大震災。地震を予知するのは非常に難しいです。事前に地震の被害が多いかどうか、近隣諸国との関係が悪いかどうかなどである程度は地政学的リスクやパンデミックリスクを想定できます。それでも、原発があわやメルトダウンという状況まで追い込まれることを事前に予想して株式投資に反映させるのはおそらく無理です。東日本大震災後に地震保険の保険料が値上がりしたらしいですけど、これは、保険を組成するにあたって綿密に調査しても被害の事前予想は難しいことを表しています。「予想できない出来事」の代表格です。

マーケットでは、マクロ経済の悪化によって株式の需給崩壊し株価が下落したり、競合他社の業績が悪くて株価が下落したり、冷夏で株価が下落したり、ブラジルの干ばつでコーヒー豆の値段が上がって株価が下落したりします。株式投資は世界が舞台なので、世界で起こることは大なり小なり株価に影響する訳です。

自分の投資している企業の業績が良くても悪くても、自分の思い描いたシナリオ通りにことが運んでいるように見えても、株価を決めるのは市場です。もし思い通りにいっていないのであれば、そもそも前提が間違っていたのかもしれないし、自分が把握できていない何かがあるのかもしれません。そこで思考を止めず目を見開いて現実を受け止めなければ、大きなダメージを負う可能性が出てきます。もし仮にダメージを負うことがあれば、それを授業料にして戦い続けましょう。ただ損をするだけというのは、絶対避けなければなりません。