デフレからインフレを目指す異次元金融緩和の成功失敗をウォッチする3つの指標

2015年11月8日

黒田日銀総裁のもとで推し進められている緩和政策は、大きく日本の経済状況を変えています。大規模な緩和について賛否両論ありますが、どちらが正しいのか俺にはよくわかりません。でも、個人投資家としては、日銀の方針に沿ってポジションを立てるのが一番賢い立ち回りなのではないかと思います。国策に売り無しです。

ただし、国策が想定通りに実現しないリスクが当然あります。そこで、異次元金融緩和が目指す方向に進んでいるのかどうかウォッチをする必要があると思います。これから金融緩和の成否を定点観測するために、3つの指標をチェックしたいと考えています。

日銀
日本銀行 Bank of Japan http://www.boj.or.jp/

1.マネタリーベース

白川元日銀総裁は、金融政策の目標を「金利の上げ下げ」としていました。でも、政策金利は0.1%程度なので操作する余地がほとんどありません。そこで、黒田総裁は金融政策目標を「供給するお金の量の上げ下げ」に変更しました。マネタリーベースとは、世の中に出回っているお金の量のことです。

デフレ脱却のため、マネタリーベースを大きく拡大することがBOJの目標です。マネタリーベースが増えると、お金の量が増えてインフレ・円安・株高になるという傾向があります。

  • インフレ:お金の価値が下がって、物の値段が上がる
  • 円安:円の価値が下がって、他国通貨の値段が上がる
  • 株高:お金の価値が下がって、企業はその分だけ販売価格を上げるので利益が増える

というわけで、定点観測をする一つ目の指標を「マネタリーベース」とします。早速マネタリーベースを観測してみましょう。マネタリーベースの数字は日銀で公開されています。

マネタリーベース :日本銀行 Bank of Japan
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/

マネタリーベースをグラフにしてみると、2013年2月頃から上向きになっていることが分かります。日銀の目論み通りに事が進んでいるようです。

マネタリーベース(季節調整済)

2.ブレーク・イーブン・インフレ率

ブレーク・イーブン・インフレ率とは、次のように説明されています。

PIMCO Bond Basics 物価連動債の解説
http://media.pimco.com/JPDocuments/BB-S14_web.pdf

ブレーク・イーブン・インフレ率とは、同年限の物価連動債と名目金利債券に投資する際、
両者の利回りが等しくなる(break even)ようなインフレ率を指します。また、名目利回り、
実質利回りはともに市場で取引されるそれぞれの債券価格によって決まるため、ブレーク・
イーブン・インフレ率は、物価連動債の実質価格に市場が織り込んでいる期待インフレ率に
ほぼ等しいと考えることができます。

要するに、ブレーク・イーブン・インフレ率=期待インフレ率です。デフレ脱却からインフレを目指す日本銀行としては、期待インフレ率をプラス方向に持って行きたいわけですね。ブレークイーブンインフレ率についてはグラフが公開されているので、ホームページでカンタンにグラフを見る事が出来ます。

BEIの推移 | 日本相互証券株式会社
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html

ブレーク・イーブン・インフレ率(BEIの推移)

ブレークイーブン・インフレ率のグラフははっきり右肩上がりになっており、これも日銀の狙い通りになっているようです。

3.10年物日本国債金利

黒田さんが「リスクプレミアムの圧縮」と言っているのは、次のような流れを想定していると理解しています。風が吹けば桶谷が儲かる的な印象も受けますが。。。

日銀が国債の購入量を増やす→長期国債の金利が下がる→長期国債の魅力が比較的小さくなる→国債以外の資産にお金が回る→リスクプレミアム(リスクの高い資産を保有する事による利益)が小さくなる

さて、10年物の日本国債金利ですが、なんとなく0.6%あたりで落ち着いているように見えたのが一段上昇しています。これは良くありません。日銀の狙い通りに国債の利回りが下がるどころか、逆に上昇を始めています。

最近の企業の予想業績を反映し、リスクプレミアムと株式益回りも上昇しています。これは良い傾向なのですが。。。

国債・株式利回り・リスクプレミアム

各種データは以下を参照しています。

モーニングスター [ 東証1部業種別データ > TOPIX > 東証一部 ]
http://www.morningstar.co.jp/RankingWeb/SectorPart.do?sectorCode=0000
日本相互証券株式会社
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/main_rate.php
2013年度経済見通し
http://news.mynavi.jp/news/2013/01/29/135/index.html

現時点で経済指標からわかること

今のところ、ある程度黒田さんの狙い通りに経済は変化しているようです。マネタリーベースは増え、期待インフレ率は上昇しています。ただし、日本国債金利は狙いとは逆の方向に動きつつあります。

これは、銀行等の金融機関が日本国のバランスシート拡大に不安を抱いているからなのか、海外からの買い入れが少なくなっているからなのか、値動きが荒すぎ・サーキットブレーカー発動し過ぎということでリスク回避から売られているのか、原因についてはよくわかりません。が、この傾向に抑えがかからないと、デフレ脱却のストーリーに影が差す可能性もあります。

俺は現在、インフレの流れに沿って不動産・金融・円安・高級品内需というテーマでポジションを抱えています。ストーリーに綻びが出ていないかどうか、定点観測によって今後の成り行きを見守りたいと思います。